住まいの掃除は毎日しているという方でも、お墓の掃除となると勝手が違うため、戸惑う方も多いことでしょう。ましてご先祖が眠る大切な場所です。特別なマナーやルールもあるのではないかと気になるところですよね。
今回は、お墓掃除を行う際のマナーと具体的な手順を解説します。
お墓掃除は、頻繁にはなかなか行けないからこそ、ポイントを押さえた掃除の手順や持ち物もしっかり知っておきたいですね。
お墓掃除はいつすべき?
お墓掃除は年に何回、どのタイミングで行うか、ということにまったく決まりやルールはありません。一般的にはお盆やお彼岸など、お墓参りとあわせて行うことが多いようです。
また、それ以外にも機会を設けて「月一回」の掃除が理想ともいわれています。こまめに掃除をした方が汚れが溜まらず、掃除自体も大変ではなくなるからです。
しかしこれはもちろん義務ではないですし、義務感を負ってしまうとかえって苦痛に感じてしまいかねません。お盆やお彼岸にお墓を訪ねることが難しい事情がある人もいることでしょう。
大切なのはご先祖を思う気持ちであり、たとえなかなかお墓掃除を行えないとしても、頻度は問題ではありません。心を込めてきれいにしようという思いが大事なのではないでしょうか。
とはいえ「よその家庭はどのようにしているのだろう」と気になることもあるでしょうし、最低限のマナーももちろん存在します。次項ではそれらを順に見ていきましょう。
お墓掃除で守るべきマナー
控えめな服装で
お墓参りやお墓掃除の際の服装にも、明確な決まりはありません。しかしご先祖が眠る場所であることをわきまえた服装にするのは、最低限のマナーといえるでしょう。ほかにも参拝者がいることも忘れてはいけません。
派手な色合いや柄物のシャツ、極端に露出の多い格好は避け、動きやすくて汚れてもかまわない服装が最善です。お参りはともかく掃除が主な目的であれば、ジャージとTシャツでもかまわないほどです。
掃除前には手を合わせる
お墓についていきなり掃除を始めるのではなく、まずはご先祖に手を合わせて挨拶をしましょう。
静かに掃除する
掃除中は大きな声を出さず、なるべくお静かに。周囲に迷惑をかける行為、ご先祖に対しての失礼な態度は慎みます。
他人のお墓の区画に入らない
掃除をする際に、自分のお墓区画内にとどまらず他人の区画に足を踏み入れることも避けましょう。掃除をしているまさにその時間に、その区画の参拝者がいてもいなくても、マナー違反です。
たとえば家の庭に水やりをするとき8車を洗うときに.隣家の敷地内に踏み込むでしょうか?それがとても非常識であるということは、誰もが感じることでしょう。
お墓も同様だと思えるはずです。
ゴミは持ち帰る
お墓掃除をすると、集めた落ち葉や抜いた雑草などけっこうな量のゴミが発生します。ゴミを処分するまでが掃除です。必ず持ち帰る、もしくは霊園によってはゴミ回収場所があるのでそこに運ぶ、という仕上げを忘れずに行いましょう。
せっかく掃除をしたのに、最後の仕上げがなければ台無しです。
お供物は持ち帰る
お墓掃除のあとはお参りをすることが多いでしょうが、その際にお供えしたものはすぐに持ち帰ることもマナーのひとつです。飲食物は日にちが経つと腐敗臭を放ち始めたり、動物に食べ散らかされてしまったりする恐れがあるので、景観的にも衛生的にも大変よくありません。墓地や霊園側でも即日持ち帰ることを推奨していることがほとんどでしょう。
持ち帰って家族でいただいてもよいですし、墓前でいただいてもよいでしょう。それらの行為はマナー違反には当たらないので、問題はありません。
生花もやはり時間が経つと枯れてしまい、残念ながら不要物に変わってしまいます。綺麗な状態でお供えして手を合わせ、そのあとはお供物とともに持ち帰りましょう。
ろうそくの消火の確認をする
線香やろうそくは、火災の原因ともなりかねないため、お参りの帰り際に必ず消火していることを確認しましょう。消火確認のみならず、こちらもお供物や花と同様、持ち帰るのがマナーとしては間違いがないといえます。
共有の道具はきれいに片づける
霊園や墓地によっては、掃除道具を貸し出してくれているところもあります。共有のものであるという意識を忘れず、丁寧に扱って、綺麗に洗ってから返却場所にきちんと戻しましょう。
除草剤は勝手に使わない
墓所の雑草をきれいに抜く、刈ることも掃除の大事な行程のひとつですが、除草剤を使うことは基本的にNGです。刺激が強いためほかの参拝者に影響を及ぼす恐れもあるうえ、雑草以外の植物も枯らしてしまうことが考えられるからです。また、誤って墓石にかかってしまうとこれもダメージとなってしまいます。
できるだけ午前中に行う
お墓掃除の時期や頻度、時間帯には特に決まりがないと述べましたが、一般的によいとされるのは午前中です。他のどんな用事よりも優先して掃除やお参りに来る、ということがご先祖に対する礼儀を示すことになるからだといわれています。
また、午前中は夏でもまだ涼しく、そして参拝者も多くない時間帯です。特に朝早くであれば空気も澄んでいて、清々しい気持ちで掃除をしながらご先祖と向き合えるのではないでしょうか。
もちろん、午後以降になっても何か問題があるわけではありません。時間に余裕があるのであれば、ぜひ午前中に行いましょう、ということです。
墓石を傷つける行為をしない
洗剤・たわしは使わない
お墓掃除に台所洗剤などの家庭用洗剤を使うことはやめておきましょう。墓石にシミをつけてしまったりコーティングが剥がれてしまったりする原因となるだけでなく、お墓の敷地の環境にも負荷をかけてしまうことになりかねません。
また、たわしなどの硬いものでゴシゴシこするのもNGです。やはり墓石に傷をつけてしまいます。使うならやわらかいスポンジで、そして水だけできれいにしましょう。お墓掃除は、シンプルで基本的なやり方が実は1番適しているのです。
水以外のものを墓石にかける
故人が生前好きだったお酒など、水以外のものを墓石にかける行為も、墓石にとってはよくありません。飲み物をお供えするなら、墓石にかけるのではなく墓前に置くのがよいでしょう。
濡らしたままにする
お墓掃除は、水拭きというより直接水をかけることが多いでしょう。しかし、せっかくきちんとした手順で掃除を行い、水で汚れを流しても、そのあと墓石を濡らしたまま放置してしまうのは仕上げに欠けます。
屋外では、空気中にさまざまな細かい物質が浮遊しています。墓石を濡らしたままにすると、それらが付着し、かえって汚れの原因ともなってしまうのです。コケの原因になることもあります。
水をかけてさっぱりしたら、しっかりと拭き上げて、墓石をピカピカの状態にして完了しましょう。
迷信!?お墓掃除で避けた方がよいこと
ひとりでお墓に行ってはいけない?
「霊を引き寄せるから」という理由で、昔はひとりきりでお墓に行くのは避けるよういわれていました。むろん「霊」のくだりは完全な迷信ではありますが、昨今は熱中症の危険が多く潜んでいるため、特に高齢者ひとりきりのお墓参りは控えるように注意喚起されている墓地が多くなっています。
また、墓地というのは足場が悪いところも多いため、怪我の恐れもあります。ひとりきりでお墓に出向いて、もし倒れたり怪我をして動けなくなってしまったりすると、長時間助けがないことが考えられます。
「霊」の部分はともかく、お墓に赴く際にはできるだけ複数人で行動するほうが安心といえるでしょう。特に掃除ともなると重労働なので、人数がいるに越したことはありませんね。
日が暮れてからお墓に行ってはいけない?
こちらもやはり「霊を見るから」という理由であり、もちろん迷信です。しかしこれも前項同様、暗くなってからのお墓は足元も危険であり、掃除をするにも不便で仕方がないでしょう。
お墓参りや掃除は、日が暮れる前、できれば午前中早い時間帯に行くのがもっともよいと思われます。
お墓掃除を実践しよう
お墓掃除の手順
部屋などの掃除の基本は、一般的に「上から下へ」です。汚れや埃は上から下に落ちていくため、下から先に綺麗にしても上からの汚れが再度下に溜まり、二度手間になってしまうからです。
しかし、お墓掃除に関しては若干の例外があります。まずは「敷地、つまり足元を掃除する」ことから手をつけるのです。
では、お墓掃除の手順を見ていきましょう。
1.敷地内を掃除する
まずはお墓のまわりに落ちている枯れ葉や枯れた花、ゴミ、線香の燃えカスなどを取り除いたり、雑草をむしったりすることから始めましょう。
なぜこのステップが最初なのかというと、石塔の掃除を始めてしまうと石塔を洗い流す水が敷地に流れてしまい、枯れ葉や雑草が濡れて取り除きづらくなってしまうからなのです。
墓石のまわりに敷き詰めている玉砂利は、大きなゴミを取り除いてからザルなどに入れて水洗いしましょう。
2.石塔を綺麗にする
石塔は「上から下へ」の基本通りで問題ありません。まずは線香立てや花立てなど外せるものはすべて外し、水を少しずつかけながら、やわらかいスポンジでやさしくこすり洗いをしていきます。
3.線香立てや花立てなど付属物を洗う
細かいものを個別で洗います。
4.拭き上げる
細かい溝やくぼみなどの水分も綺麗に拭き取りましょう。
5.お墓に手を合わせる
綺麗になったお墓に線香と花を供え、手を合わせましょう。
掃除の際に用意するとよいもの
軍手
草むしりの際などにはあった方がよいでしょう。また、スポンジでは掃除のしにくい部分は、軍手を履いたまま水で濡らし、指を這わせてこすると、細かいところもきれいにできます。
やわらかいスポンジ
よほど頑固な汚れでなければ、やわらかいスポンジでやさしくこするだけでも十分きれいになります。金属製のタワシなどは、墓石を傷つける原因となるので避けます。
拭き上げ用の布
主に濡れた墓石や細かな付属品を拭く際に使います。少し多めに用意しておきましょう。
バケツ
お墓掃除には水が不可欠であるため、それを汲むためのものです。霊園によっては貸し出してくれる共用のものが用意されているところもあります。
ゴミ袋
掃除で出たゴミは全て持ち帰ります。霊園で回収してくれる際は、分別ルールに従いましょう。
歯ブラシ
墓石の刻字された部分などの汚れ落としに活躍します。
ほうき・ちりとり
お墓掃除には掃除機が使えません。原始的な掃除用具であるほうきとちりとりが、もっとも役立ってくれます。
シャベル・ザル
シャベルで玉砂利をすくってザルに入れ、水洗いします。
お墓掃除が難しい場合はどうする?
お墓のお手入れがご先祖に対する感謝の念であるといっても、それを定期的に行うことがどうしても難しいという事情を持つ方は、少なからずいるはずです。
そういった方たちのために、近年はさまざまなサービスが登場してきています。
永代供養墓や納骨堂を利用する
永代供養とは、故人の家族や親族に代わって墓地や霊園がお墓の管理・供養を行なってくれる形態です。管理費用は必要となりますが、お墓の掃除も含めてきちんとした供養をまかせられるため、近年人気が高まっています。
また、納骨堂とは墓石を建立せず、屋内に遺骨を安置する(屋内に墓石を建立するタイプもあります)施設で、こちらは墓石そのものがないため大規模な掃除は必要がありません。納骨堂には永代供養がセットとなっているところも多く、管理・供養も安心してまかせられるのです。
石材店のクリーニングを利用する
専門家の力を借りるのも手です。石材店では墓石の補修だけではなく、クリーニングも行ってくれます。長い間掃除ができなかったときなど、まず一度プロのクリーニングでピカピカにしてもらうのもよいでしょう。
お墓掃除代行サービスを利用する
近年はお墓掃除やお墓参りさえも代行してくれるサービスが存在します。石材店のクリーニングよりも安価に抑えられることがほとんどで、なおかつ細かな依頼にも応じてくれやすいため、こういった業者を探してみるのもおすすめです。
まとめ
お墓掃除というものは、なかなか頻繁にできないものです。したがって「何か特別な掃除方法」があるのではないかと身構えてしまいがちですが、意外にシンプルなやり方で問題がないということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
頻度やタイミングも、自分のできる範囲で決めてかまいません。義務感を持ってしまうと、掃除自体が苦痛になってしまい、それではご先祖を大切に思う気持ちと矛盾を起こし、本末転倒となってしまいます。
大事なのは、あくまでご先祖への想いです。お墓掃除をしながらゆっくり故人を偲ぶ。そのような時間にできるとよいですね。