毎年お盆やお彼岸の時期には、家族そろってお墓参りに行くことが習慣になっている方は、日本人には多いことでしょう。しかし、それ以外にもお墓参りをするべき日や、反対にしてはいけない日というものはあるのでしょうか。もしもルールやマナーがあるとするなら、ぜひ知っておきたいですよね。
今回はお墓参りについて、特にその「時期」に関してのお話です。
お墓参りに「行ってはいけない日」はあるのか
お墓参りにはいつ行くべきか?というお話の前に、反対にそもそも「行ってはいけない日」というものはあるのかどうかを知っておきましょう。
結論からいうと、「この日は行ってはいけない」というタブーは、お墓参りにはありません。後述しますが、ハレの日の代表である正月でも、むしろお墓参りは行くべきであるといっても過言ではないほどです。
よく「仏滅の日はお墓参りに行くべきではない」というお話を耳にします。しかし、これには実はまったく根拠がありません。仏滅を含む「六曜」という考え方は仏教となんら無関係であり、お墓参りにその思想を持ち込むのはナンセンスなのです。単純に「仏滅」という字面に不吉を感じるから、という声もありますが、仏滅はもともと「物滅」という字があてられていたもので、字面にもまったく意味はないのです。
お墓参りをする「意味」を考えれば、タブーの日がないというのは納得がいくことでしょう。お墓参りとは、本来自分のご先祖に会いに行く、感謝をする、報告をする場です。ご先祖側からすれば、いつであっても子孫が会いにきてくれるのは嬉しいことのはずです。ですから、行きたい!と思った日に行くことには何の問題もタブーもないのです。
お墓参りにはいつ行く?
お墓参りといえば、お盆やお彼岸に行くイメージが強いでしょう。もちろんそのようなお墓参りシーズンに行くことも大事なことではありますが、お墓参りには「行ってはいけない日がない」のと同様、「行かなければならない日」もありません。
前述しましたが、行きたい!と思った日に行けばよいのです。
したがって、お墓参りの頻度やタイミングを義務化する必要はありません。義務だと思うとかえって心理的に負担となってしまうので、「行きたい」と思う気持ちが大事になるのです。
とはいえ、慣習としての意味でも多くの人がお墓参りに行く時期は、1年の間にいくつかあります。それらについては一通り押さえておきましょう。
お盆
お盆は、日本古来の祖霊信仰と仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が混ざり合ってできた行事です。仏教ではもともと「霊」の概念はなく、「お盆には祖先の霊が家に戻ってくる」という考え方は、祖霊信仰の影響というわけです。
迎え火を焚いて祖霊をお迎えし、送り火を焚いて祖霊にお帰りいただく行事であるお盆の時期は、祖先のお墓参りのタイミングとしては1年のうちでもっともふさわしい、といっても過言ではないでしょう。
新盆(初盆)
四十九日が過ぎてから初めて迎えるお盆を新盆(初盆)といって、お墓参りとともに法要や会食を行うことが多く、このお盆だけはほかのお盆と区別されます。普段のお盆のお墓参りは普段着でかまいませんが、新盆のお参りには喪服を着用します。
お彼岸
「彼岸」はもともと仏教用語です。「彼(か)の岸」つまりあの世と、「此岸(しがん、此(こ)の岸」つまりこの世、その境に流れているのが「三途(さんず)の川」だというお話は聞いたことがあるでしょう。
とはいえ、お彼岸の時期に死者供養をすることも日本独自の文化であり、仏教が広く信じられているインドや中国ではこの習慣はないそうです。
お彼岸は春彼岸と秋彼岸の2回あります。それぞれ春分の日と秋分の日を真ん中の日と置いて、前後3日ずつ、つまり春と秋で1週間ずつのお彼岸があるということです。
春分と秋分は、ちょうど昼と夜の長さが同じになる日であり、また太陽は真東からのぼって真西に沈む日でもあります。
命日
祥月命日・回忌法要
祥月命日(しょうつきめいにち)とは、故人が亡くなったまさにその月日のことです。たとえば6月1日に亡くなったのであれば、毎年の6月1日が祥月命日となります。
この日を基準に一周忌や三回忌、七回忌といった「回忌法要」が執り行われることになり、それに合わせてお墓参りをする人も多いでしょう。
月命日
月命日は、毎月の、故人が亡くなった「日」です。6月1日が命日であるなら、毎月の1日が月命日となります。
毎月お墓参りに行くと決めている人は、この月命日にお参りすることが多いでしょう。
年末年始
年末年始、特に年始は初詣に行く時期なので、お墓参りには適していないと感じる方も多いかもしれません。日本人には「死は穢れである」という考え方が根強いからです。
しかし、古くは年始というとお盆と並んでお墓参りに赴く時期でした。
氏神のいる神社に新年の挨拶とお参りに行き、そして自分の祖先のいるお墓にも挨拶とお参りに行く。そのように考えれば、年始にお墓参りをするのもなんらはばかられることではないでしょう。
年末年始は、家族や親族が一堂に会する機会となる人も多いでしょう。一家そろってお墓に手を合わせに赴いてはいかがでしょうか。
人生の節目・報告があるとき
学校の入学や卒業、就職、結婚、出産など、人生の節目で大きな報告をするためにお墓参りをする、という方も多いでしょう。
これまでの人生を見守ってきてくれて無事節目を迎えられた感謝、これからの未来に対するお祈り、どちらであっても、この日にお参りすることには大きな意味があるといえます。
お墓参りに適した時間帯・避けるべき時間帯
お墓参りは、1年の間の時期と同様に、1日の間でも、この時間帯に行わなければならないというルールはありません。
ただ、もっとも適しているのは早朝であるともいわれています。空気がまだ清々しい時間帯であり、参拝者の数も少なく、また1日のなかで何を置いても先にお墓参りに来た、ということが先祖に対する礼儀を示すことになるから、というのも理由です。
「今日はどこそこに行くついでにお墓参りもしよう」という「ついで参り」ではなく、「今日はお墓参りをしてからどこそこに行こう」という意識になることで、先祖に対して礼を尽くす態度にもなるということです。
逆に、「逢魔が時(おうまがとき。魔物に会う時間帯)」と呼ばれる夕方や、暗くなってからのお墓参りは避けた方がよいでしょう。単純に、足元が見えなくなるほどの暗闇に包まれる時間帯のお墓参りは危険であるため、先人はこのような言い伝えで暗い時間のお墓参りはやめておいた方がよいということを警告しているといえます。
お墓参りの仕方
お墓参りは、行こうと思い立ってただ手を合わせに行くだけでもかまいません。そのため、ここで挙げるのはごく一般的なお墓参りの手順です。親族などと連れ立って行くのであれば、マナーとして覚えておくに越したことはないでしょう。
持ち物
お線香・ろうそく
正式なやり方では、お線香にはライターやマッチから直接火をつけるのではなく、ろうそくに火をつけてそこから火を移します。一通りセットにして持っていくとよいでしょう。
お花・供物
故人にお供えするお花と供物を用意します。供物は特に故人の好物だったものを準備するとよいでしょう。お菓子やお酒、ジュースなど故人の好みを思い出しながら選びましょう。
供物はそのまま墓石に置くのではなく、半紙や懐紙を用意して敷き、そのうえにお供えします。
お参りが済んだら、お花も供物も持ち帰るか、供物は墓前でいただきましょう。これは、マナー違反にはなりません。そのままにしておいてしまうと、野生動物に食べ散らかされたり、腐敗してしまったりします。
掃除道具
お墓参りの際にお墓掃除もするのであれば、掃除道具もそろえていきましょう。墓石を拭くやわらかいスポンジ、水気を拭き取るタオルを多めに、細かいところをきれいにするために歯ブラシもあると便利です。水を汲むバケツ、雑草を刈る鎌など、玉砂利を洗うザルも必要に応じて用意し、ゴミ袋もお忘れなく。
お墓参りの手順
本堂や御本尊にお参りする
寺院墓地の場合は、まず個々のお墓に参拝する前に、本堂や御本尊にお参りします。
お墓に手を合わせる
お墓掃除もする場合は、掃除の前にまずご先祖への挨拶に手を合わせましょう。
掃除をする
掃除の手順は、敷地のゴミを拾い雑草を刈る→石塔に水をかけ上から下に拭いていく→線香立てや花立てなどの小物を洗う→玉砂利をザルに入れて水洗いし戻す→墓石を拭き上げる、という順で行いましょう。
お花や供物をお供えする
半紙や懐紙を敷いて、そのうえに供物をお供えします。お花は花立てに立てましょう。
お線香に火をつけてお参りする
お線香を焚いて、まずは参拝者全員で手を合わせます。それからひとりずつ墓前にお参りします。
まとめ
お墓参りをする際に「この日に行くべき」「この日は行ってはだめ」という決まりはありませんが、お盆やお彼岸など、一般的にお墓参りに行くことが慣習となっている日は覚えておくとよいでしょう。
お墓参りはご先祖に感謝の気持ちを伝えに行く場です。いつ行くべきかということにこだわりすぎるのは、それこそ本末転倒になってしまいます。行きたい、と思ったときに行く。基本はそのような姿勢でいるとよいでしょう。