「永代供養」は、少子高齢化や核家族化が進んでいる背景から、近年急速に広まってきたお墓の形式です。以前は「先祖代々の墓」を子孫が供養・管理し、後世まで受け継いでいくという形式が当たり前のように選ばれてきましたが、永代供養はそれとはまったく異なる形で遺骨を管理します。
しかし、そもそも永代供養とはどういうものなのか、ということからわからない方も多いでしょう。メリットやデメリット、細かい内容も含めて、今回は永代供養に関してさまざまな観点から解説していきます。
永代供養の概要
永代供養とは
永代供養(えいたいくよう)とは、一言でいうと「遺族に代わって、遺骨を霊園や寺院が長い年月供養・管理をしてくれる」という形式です。
身寄りがなく墓守をしてくれる人がいない方や、さまざまな事情で遺族がなかなかお墓の供養・管理をすることが難しい方などにとって、とてもありがたい方法といえます。
ただし「永代」ということばからは「永久に」「永遠に」というイメージをいだきますが、無限の年月ではもちろんありません。ある一定の期限は個別供養がなされますが、その後は「合祀(ごうし)」や「合葬(がっそう)」といって、個別のお墓から遺骨が移され、ほかの故人の遺骨と一緒に埋葬されることになります。
遺骨は最終的にどうなるのか
上述したように、永代供養では永久に個別供養をしてもらえるわけではなく、最終的には合祀されます。詳しくはあとで解説しますが、合祀までの期間もプランによってさまざまな選択肢があり、「個別安置なしですぐに合祀」「個別安置の期間を過ぎたのち合祀」そして個別安置の期間も「33回忌まで」「17回忌まで」「50回忌まで」といろいろです。
いずれにしても、最終的には合祀される、つまり個人の遺骨を判別するのは不可能な状態になる、ということは重要なポイントなので、この点をまずしっかり押さえておきましょう。
ただし、合祀されても引き続き管理と供養は行われます。そこは安心できますね。
永代供養の費用内訳と相場
永代供養のメリットのひとつに、通常のお墓よりも費用が安いというものがあります。墓地の土地を購入(=正確には「永代使用権を得る」)するわけではなく、また専有する面積も小さいからというのが1番の理由でしょう。
一般的に、永代供養でかかる費用の相場は50~150万円程度といわれています。もちろんその霊園や墓地、プランなどによって差は生まれます。
内訳としては、「永代供養料(お墓の維持管理や供養をしてもらうための費用)、「納骨料」、「刻字料(墓誌や石碑に名前を彫ってもらう費用)」などであり、契約時に全額支払うケース、永代供養料以外に管理費用がまた別でかかるケース、個別安置の期間だけ管理費用が別途かかるケースなどさまざまです。
こちらも霊園や寺院、そして選択するプランによって異なるため、しっかり確認が必要です。
「永代使用」との違い
前項で少しだけ触れましたが、永代供養と似たことばに「永代使用」というものがあります。通常は「永代使用」単体のことばではなく「永代使用権」「永代使用料」などの使い方をされますが、永代供養とはまったく異なるものなので、注意しなければなりません。
永代使用権というのは、墓地の土地を永代にわたって使用できる権利のことで、通常のお墓を建てた際に得られるものです。永代使用料とは、その権利を得る費用、つまり永代にわたる墓地使用料と考えればよいでしょう。
永代供養墓の種類
屋外型
納骨壇型
屋外型の永代供養墓としてはもっとも一般的に知られているものです。石材の棚に骨壺を納めます。安置スペースは共同ですが、骨壺は個別で安置できるところもあるため、その場合はのちのち分骨が可能なこともあります。
納骨塔型
供養塔と呼ばれる、石材で造られたモニュメントのなかに遺骨を安置します。納骨壇型と違い、初めから合葬されることが多いのも特徴です。
合祀型
前方後円型や墳丘の形をした大きな陵墓の下に、ほかの故人の遺骨とともに埋葬される形式です。初めから合葬されることがほとんどですが、なかには一定期間個別の骨壺で安置されるタイプもあります。
樹木葬
近年注目を浴びている形式です。墓石の代わりに樹木や草花を墓標とするもので、まるで庭園や公園のような場所で眠ることができます。
樹木葬と永代供養墓は「お墓の種類」としてそれぞれが存在しているのではなく、「永代供養墓の形態のひとつとして樹木葬がある」あるいは「樹木葬を選ぶとほとんどの場合永代供養となる」という関係であると考えれば、これらの形式の立ち位置がわかりやすいでしょう。
永代供養付一般墓
一般的な墓石のあるお墓に、永代供養がプラスされたものです。一般的なお墓を建てたはいいものの、墓守がいなくなってしまった場合などには、霊園や寺院が引き続き供養や管理をしてくれます。
屋内型
屋内型は、一般的な墓石のお墓に対して「納骨堂」といういい方もされてきました。近年はさまざまな形態の納骨堂があり、費用やお参りのしかたで多くの選択肢が用意されています。
ロッカー型
見た目がロッカーのような個別収納スペースに、遺骨や場合によっては位牌・思い出の品などを納めておけるタイプです。シンプルで小さめなサイズのものが多いため、その分費用は抑えめであるところがメリットです。お参りするときは、ロッカーの前か共同の参拝スペースを利用します。
仏壇(霊廟)型
ロッカー型の仏壇パージョンといったところです。小型の仏壇が一区画ごとに並んでいて、上段は仏壇、下段は遺骨を納める空間となっていることが多いようです。ロッカー型よりも大きいため、ある程度の人数の遺骨も安置することが可能です。大型かつ装飾が豪華であることが多いので、ロッカー型より高めの価格設定となっています。
神棚型
一昔前の納骨堂といえば、この形式であったといえます。ただしその場合、遺骨の一時的な安置場所として存在していました。永代供養墓としての神棚型は、屋内に設けられた神棚に遺骨を並べます。
位牌安置型
神棚型のように設けられた棚に、位牌を並べて安置する形式です。位牌と遺骨の両方を並べるタイプ、並べるのは位牌のみで遺骨の安置場所は別に設けられているタイプとがあります。ごく限られたスペースとなるため、思い出の品などは置けませんが、その分費用はかなり抑えられる形式です。
自動搬送型
遺骨は普段バックヤードの収蔵場所に安置されており、専用のお参りスペースにICカードをかざしたりタッチパネルで操作したりすると、安置場所から該当の遺骨がコンピューター制御によって自動で運ばれてくるというものです。
屋内の永代供養墓としては最新式の形式であり、外観もマンションのように見えるものが多いため「マンション型」とも呼ばれます。遺骨の安置場所を最小限のスペースに抑えられるので、都市部で多く見られ、だからこそ利便性もよくセキュリティーも万全です。その分、価格もほかの形式の永代供養墓より高めの設定になっています。
屋内墓石型
一般的なお墓にあるような墓石が、屋内に置かれている形式です墓石が必要なのでほかの屋内型よりも価格は高めですが、墓石自体は屋外型よりもコンパクトであり、一区画も小さめであるため、一般的な屋外型のお墓よりは抑えられています。
屋内合祀型
屋内に設けられた供養塔のもとに、ほかの故人の遺骨とともに合葬される形式です。ほかの形式では、遺骨は一定期間個別で安置されますが、合祀型の場合はすぐに合葬されます。
永代供養のメリット
管理・供養をまかせられる
永代供養の最大のサービスでありメリットであるのが、この「お墓の管理と供養を霊園や寺院にまかせられる」という点でしょう。墓守をしてくれる人がいない、承継者がいないという人でも安心して眠ることができます。
子孫に負担がかからない
お墓の管理費などの金銭的負担、お墓参りにかかる時間や手間などの肉体的手間、お墓参りになかなか行けない悩みなどの精神的苦痛を子孫に負わせることが、永代供養墓ではすべてなくなります。
お墓に対する考え方や姿勢が多様化してきた現代では、永代供養墓の形式がありがたい家族の形、ライフスタイルというものが多いはずです。故人にとってもその子孫にとっても、最良の選択をするために、永代供養墓は大きな選択肢のひとつとなるでしょう。
価格が比較的安価
永代供養墓は承継されないことが前提であり、また一定期間経過後は合祀墓に合葬されるため、個々の区画や墓石などが必要とされず、その分一般的なお墓よりも価格が抑えられています。お墓は安い買い物ではないため、価格面でのメリットを重視する人も多いことでしょう。
宗教・宗旨・宗派が問われないことが多い
一般的な寺院墓地などでは、たとえば浄土宗の人でなければ入れない・キリスト教の人は入れないなどといったことが起こり得ますが、永代供養墓の場合はこのように宗教・宗旨・宗派を問われないことが多くなっています。宗教を理由に選択肢が狭まる恐れがなくなることはメリットといえますね。
永代供養のデメリット
合祀されたあとは遺骨が取り出せなくなる
永代供養墓では、一定期間は個別で遺骨が安置されますが、そのあとはほかの故人の遺骨と合葬、つまり混ざり合うことになります。そうすると個人の遺骨を判別することは不可能になり、取り出せなくなってしまいます。
そのため、もし改葬(別のお墓に遺骨を移すこと)を考えていたり、やはり子孫にお墓を承継させていきたいと思い直したりしても、やり直しがきかなくなります。
永代供養墓を選択する際には、よくよく検討して後悔のないようにしなければなりません。
周囲の理解が得られないことがある
お墓に対する考え方や姿勢が多様化してきている現代ですが、お墓は先祖代々受け継ぎ、子孫に承継していくもの…という考え方は、まだまだ多くの人が大事にしているものです。
また、一昔前まで永代供養墓というと「身寄りのない人が入る供養塔」を指し、さびしいイメージがつきものでした。今でもそのイメージがある人にとっては、永代供養墓を選択肢に入れること自体に強い抵抗を感じることがあるでしょう。
理解を得るためには、永代供養墓のメリットやなぜそれを選ぶのかということを丁寧に説明する必要があります。親戚や関係者一同がきちんと納得の行く形で決めたいですね。
永代供養墓を選ぶ際のポイント
永代供養墓のメリット・デメリットを踏まえたうえで、実際にどういった観点から選択を始めていけばいいのかを見ていきましょう。
まずは「遺骨の個別安置期間」を決める
前述したように、永代供養の「永代」は「永遠」という意味ではありません。もちろん長きにわたって遺骨の管理や供養は霊園や寺院によって行われますが、遺骨を個別に安置できる期間は永久ではありません。一定期間経過後、合祀されることになります。
この個別安置期間をどうするか、ということをまず決めましょう。もっとも多いのは「33回忌まで」としているところですが、「17回忌まで」や「50回忌まで」というプランも存在します。もちろん、個別安置期間はなくてもよい、すぐに合祀でかまわないという方もいるでしょう。
個別安置期間は長くなればなるほど費用もかかります。本人の意思、遺族の希望、費用などさまざまな観点から慎重に選びましょう。
お墓に入る人数を決める
個別安置期間を設ける場合は、管理や供養が必要となる遺骨や骨壺の数も決めておかなければなりません。ひとりなのか、夫婦で入るのか、家族で入るのか、いずれにしても大人数は難しく、人数制限があることがほとんどです。
永代供養墓の形式を決める
個別安置の期間が必要ないという方は、屋外の合祀型や納骨塔型、屋内の合祀型という選択になります。
個別安置期間が欲しい方は、前述したさまざまな形態から選びます。まずは屋外がいいのか屋内がいいのか、墓石はあったほうがいいのか、都市部からのアクセスの良さを重視するのか…というさまざまな要素から、最終的に絞り込んでいくことになるでしょう。
候補に挙げた霊園や寺院の供養に対する考え方を理解する
永代供養墓をおまかせするということは、自分のお墓の管理と供養を末永くお願いするということです。その霊園や寺院の、供養に対する考え方や姿勢もしっかり理解しておくとよいでしょう。自分のお墓を安心してまかせられるか、最後はそれが決め手になるはずです。
まとめ
お墓に対する考え方や意識が多様化している近年、永代供養墓という形態が注目を浴びているのは、やはりそれだけ現代人のライフスタイルにマッチしているところが多いからなのでしょう。
自分が入るお墓に関しては「死んだあとのことだから何でもいい。子孫に迷惑をかけたくない」と考えてしまいがちです。しかし残された人たちの気持ちはどうなるでしょうか?永代供養墓という選択で、本当に故人を偲ぶ心の拠り所となり得るでしょうか?
100人いれば100通りの、お墓に対する考え方があるでしょう。それは自分だけでなく、家族や親戚も同じことです。まずは自分の希望するお墓の形態や扱いを丁寧に説明し、誰もが納得のいく形でお墓を決められるとよいですね。