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お墓の「区画」とは、霊園内のお墓を建てる「場所」のこと。良い区画選びのポイントを解説

「お墓を買う」ことを決めたとき、何がもっとも重要かという点に関しては、さまざまな意見があることでしょう。お墓の大きさ、デザイン、納骨方法、お墓を建てる霊園…考えなければならないことはたくさんありますよね。

このなかでも、霊園のなかのどこに実際お墓を建てるのか、つまり「区画」はどのような場所がいいのか、ということに今回は重点を置いて解説していきます。

お墓を「買う」とは?

まず初めに注意しておきたいことは、「お墓を買う」といういいかたは実は正確ではない、ということです。

たとえば「家を買う」というと、注文住宅の場合はまず自分の希望する地域に「分譲地」を見つけて購入し、そこに住まいを建てることを意味します。土地も、その上に建てた家屋も、購入した人に所有権があります。

しかし、お墓はこのような不動産とは違い、墓地や霊園の「自分がお墓を建てる区画」の「所有権」を持つことはできません。得られるのはその区画を「お墓として使用できる権利(=永代使用権)」なのです。永代使用権を得るのが「お墓を買う」ということであり、そのときに支払う購入代金は、不動産でいうところの「分譲価格」とは意味合いが違う、「永代使用料」というものなのです。

永代使用料というからには、その墓所区画は新たに使用権を得た人だけではなく、その代々の子孫に承継されていくものです。不動産の所有権は相続されていくものですが、お墓の使用権は永代使用料を払った時点で、その子孫代々に承継されていくことが決定するのです。

区画選びがいかに重要かということがわかりますね。

墓地・霊園の運営主体による違い

墓地や霊園のなかに区画を得て、そこにお墓を建てるわけですが、区画選びのポイントに触れる前にまずは墓地・霊園にはどのような種類があるのかを見ておきましょう。

墓地は誰でも、どこにでも造れるというわけではありません。「墓地埋葬等に関する法律」のもとに、都道府県知事に認可された墓地にしか遺骨は埋葬できないと定められているのです。認可が下りる墓地は、運営主体によって以下の3種類に分けられます。

寺院墓地

寺院の敷地の中に設けられている墓地です。運営している寺院の檀家になっていることが条件であるなど、誰でも入れるわけではありません。また、お墓を建立したあとも寺院とのつながりは続き、毎年お布施が必要ということがほとんどです。

民営墓地・霊園

民間運営の墓地です。民間といっても運営はほとんどが宗教法人であり、設備やサービスは新しいものが多く、その分費用は公営墓地・霊園よりも高くなる傾向があります。また、宗教法人が運営主体でも寺院墓地のように檀信徒や門徒に限定されず、宗教は不問で利用できることが一般的となっています。

公営墓地・霊園

自治体が運営する墓地です。費用はもっとも安価ですが、その分人気が高く、条件が厳しかったり抽選になったりすることが多いところが難点です。

墓所区画

ここから本題の「墓所区画」についてのお話です。まずは区画にもさまざまなタイプがあるということを知り、それぞれを見ていきましょう。

一般墓所

お墓というとまずイメージするような、ごく一般的な墓所です。外柵(土台)で区切られていて、ずらりと墓石が並んでいるところです。一般墓所のなかでも「規格墓所」と「自由墓所」の2種類に分けられます。

規格墓所

墓石の形状や寸法があらかじめ決まっていて、単一のデザインの墓石が並ぶ墓所です。デザインにこだわりがなく、個性を出す必要がないと考えている方、ほかのお墓と比べられたくない方には相性がよいでしょう。

自由墓所

規格墓所よりも墓石の大きさやデザインの制限が厳しくないため、希望する形状や寸法のお墓が建てやすい墓所です。といってもなんでもかんでも自由というわけではないこともあるため、個性的な墓石を希望している方は事前にきちんと条件などを確認しておきましょう。

ゆとり墓所

墓石と墓石の間隔が広く取られている墓所です。区画自体が広いのではなく、墓石をコンパクトにすることで敷地のなかにゆとりを生むようにしているため、確保された敷地を利用して小石を敷き詰めたり、草花を植えたりして美しい景観にできるというメリットもあります。

芝生墓所

お墓の建つ場所一面に、コンクリートや砂利ではなく芝生が敷かれていて、隣の区画との区切りもない墓所です。建ち並ぶ墓石は西洋型の背の低いものであることが多く、視界を遮られないため明るく開放感も得られるというメリットがあります。従来の墓地のイメージからはかなりかけ離れた、あたたかみを感じられる墓所といえるでしょう。

芝生の管理は霊園が行ってくれるため、いつもきれいな状態に保たれています。

ガーデニング(花壇)墓所

墓石のまわりに草花を植えた、まるで庭園のような墓所です。無機質で暗い雰囲気になりがちな一般墓所に比べて、豊かな自然に囲まれた癒しの空間が広がる墓所であるため、人気があります。

ただ、草花の管理を行う必要があるため、お墓に赴く機会がなかなかないと、かえって見栄えが悪くなってしまう恐れがあります。管理を霊園が行ってくれるところもありますが、その場合は管理費がほかのタイプと比べて高めになる傾向にあります。

ペット共葬区画

一般的には、人間とペットが同じ区画で埋葬することはかなり難しいのが現状です。宗教的・倫理的なことを理由として、霊園の規定で許可されていないことが多いからです。

しかし近年は「ペットも家族の一員である」と考える愛好家が増えていることもあって、人間とペットとの共葬が認められている霊園も出てきています。

ペット共葬区画は、一般的な霊園のなかに別区画として設けられていることが多く、その区画にお墓を建てた場合はペットも一緒に埋葬できる、というものです。

区画を決める際に考えるべきこと

区画を決めてから墓石を選ぶ

墓石の大きさやデザインを自分で選びたい場合は、まず区画を先に決めて次に墓石、という順がよいでしょう。先に墓石を決めてしまうと、その大きさに合う区画が見つからないということにもなりかねません。

お墓を決めるときは、墓石の大きさやデザインももちろん重要な要素です。しかし、まずは区画をどこにするかという点の方がより大切なことです。後述しますが、区画は大きさだけではなく立地や環境も大事になってきます。したがって、優先順位が高いのは墓石の決定よりも区画を選ぶことだといえます。

面積と価格

区画の価格は、その広さに比例します。広ければもちろん高価になり、さらにそれは地価にも影響されるところが大きいでしょう。したがって、たとえば東京23区内であれば0.81平方メートル前後が一般的です。小さめの区画に小さめの墓石が、外柵なしであまりゆとりなく並んでいる印象です。それでも0.5平方メートル程度で100万円以上ということも珍しくなく、首都圏では1平方メートルから2平方メートル前後となるとかなりゆとりがあるように感じられるでしょう。

しかし地方に行くと、3平方メートル以上の区画が普通という地域もあります。地価も高くはないため、外柵つきで広々とした墓地が広がっていることも珍しい光景ではありません。

これも後述しますが、区画は広ければいいというものではなく、価格はもちろん霊園内での立地もまた重要です。いきなり面積から検討するのではなく、まずお墓に何を求めるのかをしっかり考えてみましょう。

区画のサイズ感を知るために、現地を実際に見に行ってみるのもよいですね。

納骨人数

前項では区画の面積と価格の関係について述べましたが、納骨人数に関しても面積と密接に関係が出てきます。

納める遺骨が多ければ、それだけ広い区画が必要になるのはいうまでもありません。ただ、地域によって「遺骨をすべて骨壺に納める」「遺骨の一部のみ骨壺に納める」など、慣習に差があります。また、カロート(納骨室)の形状によっても条件が異なってくるので、一概に「広い区画に大きな墓石でないと大人数は納められない」ということはないのです。あまり大きな区画を用意できないような都心部に住んでいる方は、まずこのあたりの点も確認してみるとよいでしょう。

区画の選び方ポイント

お墓の区画は、広ければよいというものでもありません。もちろん広い方が立派に見えますし、格式も高いと思われそうですが、区画が広いのに墓石がそれに見合った大きさではなかったりすると、逆にちぐはぐな印象も受けてしまいます。

また区画が広すぎると、手入れが大変になるというデメリットもあります。自分の手に負える範囲内で管理ができないお墓は、故人に対してかえって失礼にもなります。

したがって、お墓の区画を選ぶ際にはさまざまな要素を考慮しなければならないということです。実際にお参りすることをイメージしながら、どのような区画が自分の希望に合うかということをしっかり考えて選んでいきましょう。

日当たり・風通し・方角はよいか

日当たりや風通し・方角は、住まいを選ぶときには非常に重要な要素となりますが、お墓の場合もある程度考慮しておくべき点です。日当たりや風通しがよい住まいは暮らしやすいのと同様、お墓も暗くてじめじめしている立地よりも気持ちのよい立地のほうがよいですよね。

現実的な観点から見ても、日が当たらず湿気が溜まりやすい立地だと墓石にコケやカビが発生する原因にもなってしまいます。故人のことを考えても、お参りする側からしても、日当たりと風通しのよい区画を選びたいものです。

水はけ・地盤の状態はよいか

お墓は長い時代を受け継いでいくものです。だからこそお墓の建つ区画の地盤が緩かったり、水はけが悪かったりすると、墓石や納骨室に影響が出てしまいます。可能であれば、雨が降るとその区画がどのような状態になるかということも、実際に現地で確認するとよいでしょう。

お参りがしやすいかどうか

墓地や霊園は広大な敷地を有していることが多く、駐車場までは車で行けたとしてもそこから自分のお墓の区画にたどりつくまでの道のりが遠かったり、坂道がきつかったりすると、お参りもなかなか難儀になります。

駐車場・管理棟・共用の掃除道具置き場などが近い区画だと、便利でありお参りへの足も運びやすいでしょう。

角地であるか

家を建てる際の土地選びでも、角地は人気があります。角地は周囲に建物などが増えたりという環境の変化にも、比較的影響を受けないからです。また、片側に隣接した区画がないということは、スペースにもゆとりが生まれ、お参りもしやすくなるというメリットにつながるでしょう。

まとめ

お墓を決める際には、どこに建てるかという「区画」選びも非常に重要なポイントです。最近はお墓というものに対する考え方も多様化してきているため、霊園でもそのニーズに応えるためにさまざまな工夫をこらした墓所区画を創り出しています。きっと自分の希望に叶う場所、ご先祖が喜んでくれる墓所を見つけることができるのではないでしょうか。